がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

『異常で非情な彼らの青春 #4』 /青春

#4 午後6時になる前には帰宅することができた。 まだ、両親は帰ってきていない。共働きで、二人とも家に帰るのはもう少しだけ遅い時間帯だ(まさか両親ともに海外出張だとかで、高校生と中学生の兄妹が一軒家に二人暮らしなどという、ラブコメのお約束的な環…

『異常で非情な彼らの青春 #3』 /青春

#3 木々に囲まれたこの場所はとても静かだ。 町の気配は消え失せ、どことなく非日常を予感させる。 ここは人目につかず、どんな悪事も秘密裏に行えそうだ。もっとも、何にだってイレギュラーが紛れ込む可能性はある。この日この場に居合わせた烏丸深夜のよう…

『異常で非情な彼らの青春 #2』 /青春

#2 「それは多分、笑わないお姫さまのことだな」 深夜のクラスメイトである田中陸夫(たなかりくお)は言った。「特徴から言って間違いない」 「何だその、童話のタイトルみたいな名前の奴は」 昼休み。深夜は昼食を済ませたあと、中庭のベンチに座ってぼう…

全37話『異常で非情な彼らの青春 #1』 /青春

#1 よく晴れた月曜日の朝。 烏丸深夜(からすましんや)は、自らの不注意を嘆いた。 高校に向かう途中の交差点で衝突した女の子は、深夜と同じ学校の制服を着ていた。 少しばかり寝坊をし、遅刻をしないように、いつもより足早であったという事情はあった。 …

『電気のつくり方 #2(最終話)』 /ホラー

#2 「質問タイムに入りまーす!」 『先生』は宣言した。 「質問のある子は手を上げてねー」 「はい、先生」 S奈は垂直に手を上げた。 「何でしょう。17番」 「電用馬はなぜ脳ミソがないのに足を動かせるんですか?」 「脳ミソがないのにとは、どういうことで…

全2話『電気のつくり方 #1』 /ホラー

#1 西暦20xx年、日本。 とある、学校の教室。 ◇ 「みんな席に着きましょう」 『先生』が呼びかけると、各々好きに休憩時間を過ごしていた30人の子どもたちは、競うように自分に割り当てられた席に向かった。 机と椅子のセットは神経質なほどに均等に並べられ…

『ヒトガタ #2(最終話)』 /ホラー?

#2 「人間に、似ているから?」 俺は聞き返した。 ほほに笑みを浮かべたまま、人形師は答えた。 「つまり、言い換えれば、人間は人間に恐怖しているのではないか、ということです」 「いや、それはどうだろう。別に俺は他人が怖いとは思わないけれど。例えば…

全2話『ヒトガタ #1』 /ホラー?

#1 これからするのは、何てことのない雑談だ。 途中でピンチになるわけじゃないし、面白いおちがあるわけでもない。ただ、少しばかり、変わった体験をしたというだけの話だ。 ◇ 町外れにある洋館は、どこか浮世離れしていた。 現代において、普通に普通の住…

『空想ヒロイン #7(最終話)』 /ホラー/美少女

#7 「お別れ――そう言ったのか? 一体どこに行くって言うんだ?」 どこかに行ってしまうという発想が的はずれだということはわかっていた。 わかっていたが、認めたくなかったのかもしれない。メノウがこれから言おうとしていることを。 「やだなあ。どこにも…

『空想ヒロイン #6』 /ホラー/美少女

#6 慌てて、喫茶店を出た。もちろん、会計は済ませた。 大通りには、人の往来があった。彼らの目が気になり、僕は顔を伏せぎみにして、歩きだす。 雲一つない空。 降り注ぐ日光。 こんなに明るい所にはいられない――いてはいけないと思った。喫茶店に入るまで…

『空想ヒロイン #5』 /ホラー/美少女

#5 駅の構内は閑散としていた。 もとより、大きな駅ではない。かろうじて小さな売店がある程度の、かろうじて特急列車が停まるくらいの――そのくらいの駅。夜中の10時を過ぎれば、利用者も数えるほどしかいない。 路線も一本しかない。よって、行き先は登るか…