がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『異常で非情な彼らの青春 #31』 /青春

#31 深夜の家と林檎の家のちょうど中間あたりにある公園が待ち合わせ場所になっていた。約束の時間の数分前に到着した深夜は、ブランコを漕ぐ林檎の姿を見付けた。 林檎も深夜に気が付き、ぴょんと軽い身のこなしでブランコを降りる。深夜は不思議そうな目で…

『異常で非情な彼らの青春 #30』 /青春

#30 林檎ほ困惑した。自分に話があるという女子生徒――八重島カナが何者であるかは理解していたのだが―― 「この前も言ったけれど、私は、あなたのことを知らない」 「うん。あなたが、僕の知っている林檎ではないことは理解している」 事の顛末――幼い藤守林檎…

『異常で非情な彼らの青春 #29』 /青春

#29 昼休み。体育館裏には、久しぶりに、藤守林檎の姿があった。不登校になっていた1ヶ月間という空白が嘘であったかのように、そこに馴染んでいる。そこにいるのが、当たり前で自然に思えた。 以前と変わったのは、深夜が記憶している制服姿よりも厚着にな…

『異常で非情な彼らの青春 #28』 /青春

#28 「もちろん、誰もが君のことを藤守林檎だと認識しているし、そう名乗っているのだから、君は藤守林檎には違いない。でも、俺が今言ったのはそういう意味じゃない――もう、結構前になるけれど、八重島から話を聞いたんだ。藤守と八重島が出会った頃の話だ…