がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

01-3 /短編『空想ヒロイン』

『空想ヒロイン #7(最終話)』 /ホラー/美少女

#7 「お別れ――そう言ったのか? 一体どこに行くって言うんだ?」 どこかに行ってしまうという発想が的はずれだということはわかっていた。 わかっていたが、認めたくなかったのかもしれない。メノウがこれから言おうとしていることを。 「やだなあ。どこにも…

『空想ヒロイン #6』 /ホラー/美少女

#6 慌てて、喫茶店を出た。もちろん、会計は済ませた。 大通りには、人の往来があった。彼らの目が気になり、僕は顔を伏せぎみにして、歩きだす。 雲一つない空。 降り注ぐ日光。 こんなに明るい所にはいられない――いてはいけないと思った。喫茶店に入るまで…

『空想ヒロイン #5』 /ホラー/美少女

#5 駅の構内は閑散としていた。 もとより、大きな駅ではない。かろうじて小さな売店がある程度の、かろうじて特急列車が停まるくらいの――そのくらいの駅。夜中の10時を過ぎれば、利用者も数えるほどしかいない。 路線も一本しかない。よって、行き先は登るか…

『空想ヒロイン #4』 /ホラー/美少女

#4 「そんなもの、冷蔵庫に入れてんじゃねえよ!」 もっとほかに言うべきことがあるような気もしたが、出てきた言葉がそれだったので、仕方がない。

『空想ヒロイン #3』 /ホラー/美少女

#3 ああ、良かった。 出掛けるときの前のフリもあったから、てっきり、大怪我でもしたのかと思った。 メノウが無事でほんと良かった。 「って、良くねえよ! 人を殺したって、それどういう意味だよ!」 「どうって……そのままの意味だよ」 「そんなわけあるか…

『空想ヒロイン #2』 /ホラー/美少女

#2 イラストと言っても、そんなに大層なものではない。専用のペンを持っているわけではないし、パソコンも使わない。鉛筆とノートしか使わない落書きだ。 描くのは大抵、漫画に出てくるような女の子のキャラクターで、あの日も同じだった。 気が付いたら目の…

全7話『空想ヒロイン #1』 /ホラー/美少女

#1 夕日が沈みかけた頃に帰宅した。 古いアパートの一室。鉄製の扉を開けると、一畳もないくらいの狭い玄関が現れる。 造り付けの小さな靴棚の上部には平らな面があり、小物を置くのに適している。僕は後ろポケットからバタフライナイフを取り出し、そこに置…