がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『異常で非情な彼らの青春 #17』 /青春

#17 一学期の最後の日のことだった。 帰り路。 隣には林檎がいた。 日差しは暑かったけれど、気にならなかった。僕達は子供だったし、何より明日からの夏休みに思いを馳せて、それどころじゃなかったからだ。 この頃になると、僕たちは、すっかり仲良しにな…

『異常で非情な彼らの青春 #16』 /青春

#16 僕が林檎と出会ったのは、小学5年生から6年生に上がるときの、春休み明け――小学校生活最後のクラス替えで、同じクラスになったんだ。 とはいえ、クラス替えも6回目となると、新しいクラスメイトの半数は顔見知りだったし、実は林檎とも以前どこかで同じ…

『異常で非情な彼らの青春 #15』 /青春

#15 カナは表情に、笑みをたたえていたが、どこか、いつもとは雰囲気が違うと、深夜には感じられた。 それは、声のトーンのわずかな違いだったり、瞳の色のくすみ具合だったり――どこか、思い詰めたものが読み取れた。 「聞きたいことって、放課後でもよかっ…

『異常で非情な彼らの青春 #14』 /青春

#14 昼食後の一時。 体育館の裏側の壁とブロック塀に挟まれた、学校の敷地内において死角のようなこのスペースは二人だけの場所だ。他に人がいるのを見たことがなかった。それもそうだろう。ここには、伸びっぱなしの雑草くらいしかない。 林檎は体育館側の…