がらくたディスプレイ

ノベル(美少女/ホラー/イラスト付き)を定期的に投稿します。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。※コメント歓迎

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 このブログは、主に僕が趣味で書いた小説を残していくためのものです。

 

○作品

 こちらが、過去作と現在連載中の小説(とイラスト)の一覧です。

 

・がらくたラインナップ

 

※また、カテゴリーも、作品ごとにまとめていますので、そちらから飛ぶこともできます。

 

○ほか

 

・制作記録

・小説の書き方

・雑記

 

連載『未観測Heroines #19』 小説/長編


#19

 

 日が傾き始める。

 夕方。俺と胡桃は自分たちの家へ向けて、大通り沿いを歩いていた。

 胡桃の足取りは軽く、楽しかった今日の余韻を残している。

 そして、そんな彼女はもうすぐ、『運命』に殺される。 

 本当は、屋内でその時を迎えたかった。死に方にはパターンがあるらしいが、外よりは中のほうが危険は少なそうだ。

 しかし、粘るのも限界がある。胡桃は、基本良い子なのだ。夕方になれば、夕ご飯に間に合うように家に帰る――そんなのは当たり前のことだった。

 そう、付き合ってもいない男女が、夜遅くまで一緒にいる理由などない。前回とは状況が違う。

 いっそ、自分たちどちらかの部屋で過ごせばよかったのだが、それこそ、口実がなかった。

 俺たちは現段階で、仲の良い『幼なじみ』ではあるが、『連れ』ではなかった。

 胡桃とは昼から出かけていた。

 遊ぶところの少ないわが町だったが、電車には乗りたくなかった。つまり、運命を変えるのなら、まずは前回と違う行動を取るべきだろうと考えた。

 で、結局ゲーセンやらカラオケやらで時間を潰し、さあ、帰ろうとなって今に至る。

 至って、もうすぐ、午後5時30分。

 前回は車に跳ねられたから、とりあえず、それに気をつける。

 今度こそ、胡桃を救ってみせる。

 身を呈してでも。

 怒りは治まっていない。

 今朝のタマとの会話を思い出す。

 あんな馬鹿げた話があるか。

 

 ◇

 

「神様の余興って――じゃあ、胡桃がこんなことになってるのは、全部神様のせいってことじゃないか」

「そうにゃ」

 俺は奥歯が埋没するかと思うほど、歯を食いしばった。

「なら、俺の敵は神様じゃねえか! そいつをここへ連れてこい。話をつけてやる。いや、ぶん殴ってやる!」

「待て待て五可。そういうことじゃないにゃ。いいか、君の選択肢はゲームをクリアするか、胡桃を諦めるかにゃ」

 少なくとも後者は論外だった。

「運命的な何かのせいだと思ったら、初めから仕組まれていたことだったなんて。せめて一言文句を言ってやらなきゃ気がすまない」

「うーん、神様という言い方が良くなかったのか。五可は少し思い違いをしているにゃ」

「ああ。思い違いなら、それにこしたことはないさ。誤解を解いてくれよ」

「だって、神様の意志って――それを人は運命と呼ぶのではないのか?」

「……」

「普通、運命なんて実態のないもの、感じることはあっても、戦おうとはしないにゃ。五可はたまたま、神様だのゲームだのと言葉を得て、自分が、干渉できる気になっているだけにゃ。悪態を付いたところで、台風は進路を変えないし、地震はおさまらないだろう。五可は自分ができる範囲のことをするしかないにゃ」

 俺は、拳を床に打ち付けた。

 ろくに人も殴ったことのない拳を。

 

 ◇

 

「また、考え事してる」

 胡桃に頬をつつかれる。

「え?」

「今日、ずっと難しい顔してるよ?」

「いや、ああ、ごめん」

 それは無理もないだろう。俺にとっては、ただのデートではないのだから。

「もしかして、あの女の子のこと考えてた?」

 胡桃とタマは昨日の夜、うちで顔を合わせている。タマのことを考えていたといえば、間違ってはいない。

「でも、せっかく、二人でいるのに、他の女の子のこと考えてほしくないかな――この意味わかるよね、五可」

 歩を止め、上目遣いで俺をじっと見つめる胡桃。吸い込まれそうな感覚は、覚えがあった。あの夜、公園で胡桃に告白されたときの感覚――

「ちょっと待て」

 その続きは、今回こそ、俺が言おうと決めていた。

「なーんてね」

 いたずらっぽく笑った胡桃は、くるくるとバレリーナのように回りながら、離れていく。その周りを『黒い蝶』がひらひらと舞っていた。

(さあさあおいでよ、フシギな蝶々)

 ささやくように、どこかで聞いたことのあるフレーズが。

(あっちに行ってよ、フキツな蝶々)

 頭の中に響く。

 あの蝶がどういうものなのか、なんとなく気づいている。そう、そもそもあの山で最初に見たのは――

 俺は、胡桃の手を取り、引き寄せた。ふらふらと、『車道に侵入していく』胡桃を。

 


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「え?」

 まさに、その車道を、猛スピードの乗用車が横切った。そして、摩擦音をたてながらカーブし、大通りに出ていく。

 親の危篤か、大事な取引に遅刻しそうなのかはわからないが、大事故になってもおかしくないような、無茶な運転だった。

「もしかして、私、死ぬとこだった?」

「今日は運勢が悪いって言ったろ?」

「あ、ありがとう……」

「……」

 俺は胡桃の華奢な手を握りしめた。

「あの五可? 手、離さないの?」

「ずっと、手を繋いでいようって言ったよな」

 それは、幼い頃の約束。

 今度こそ――離さない。

「五可……」

「胡桃、俺さ。ずっと言えなかったんだけど、お前のことずっと――」

 

 ――――!!

 

 何やら遠くから絶叫が聞こえた。

 何だよ、いいところなのに。

 

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 気付いたときには、俺たちのすぐ頭上にその塊は迫ってきていた。俺たちを覆うのに十分な大きさと重厚感。隕石みたいにゴツゴツしたものではなく、人工物のようだ。

 何だって構わないさ。これは無理なやつだ。一秒後に俺たちは、潰される。

 とても避けられる余裕はない。

 俺は反射的に胡桃の体を抱きしめた。

 

 

 

/つづく

 

 

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連載『未観測Heroines #18』 小説/長編

 

♯18

 

□11月23日(水)

 

 朝日をまぶた越しに感じた。

 俺はベッドから体を起こすと、すぐに机の上のデジタル時計を確認した。

 午前7時きっかり。起床時間はいつもどおり。日にちは11月23日水曜日――認識と『ずれ』はない。

 朝起きてすぐに時計を確認するのは以前からの日課だったが、最近はルーティンという以上の意味がある。

 自分がいる場所がどこか、目覚めた座標が認識と合っているか、そんなことを確認するための作業。

 不安を取り除く作業。

 仕方がない。人間の脳はタイムリープなんて想定されて作られているはずがないから。

「タマ、どこかで見ているんだろ?」

 部屋のドアの前に家族がいたら、不審に思うかもしれないが、しかし、俺ははっきりとした声量で言った。

「出てこいよ」

 もう、わかってる。

 夜はどこか別の場所で寝ているとか、彼女はそういう存在じゃない。そんな実世界の、いわば実態のある存在ではない。

 どこからか現れて。

 そして、どこかに消える。そういう類のものだ。

「タマ、話がある」

「朝からさわがしいにゃ」

 後ろから声がする。振り向くと、押し入れから、ずるずると這い出てくるタマの姿があった。

「え? なんで、そんなとこから」

「今更だにゃ。ここが私の寝床だぞ。布団がたくさん積んであって、もぐりこむと気持ちがいいにゃ」

「いや、いつもいつの間にかいなくなっているから、てっきり、存在を消しているのかと思ってた」

「ソンザイヲケス? 何を言ってる五可。また中二病か?」

「全然、気が付かなかった……」

「無理ないにゃ。だいたい昼間まで寝てるから朝は会わないしにゃ」

 それで、学校とかから帰ってきたら、部屋にいたりするんだな。

「……夢を見たんだ」

 俺は本題に入った。

「どんな夢にゃ?」

「小学生の頃、ある子猫に出会ったときの夢だ」

「五可は昔、猫を飼ってたのか?」

「飼ってたというのとは違うな。会いに行ってたんだ」

 

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「それは……」

「ただ、今日だけじゃない、忘れていたような子供の頃の夢を最近よく見るんだ。なあ、タマ、無関係じゃないよな。『これは何だ』?」

「……夢は、五可の記憶――五可が考えているとおり、このゲームの一部にゃ。これも、ゲームの前提のようなものだから、説明しておくにゃ」

 ルールについては説明する――でないとフェアじゃないというところだろうが、しかし、起こっている事象の核心には触れられない。言えば俺が大変な目に合うということだったか。だからあまり深堀りをすると自滅になるのだが、そこはまあ、タマを信じよう。

「逆に言えば、夢の内容にこのゲームをクリアするための重要な何かが隠されているということだな」

「それはどうかにゃ?」

「でも、どうしても思い出せないことがあるんだ。夢の中に出てくる胡桃は、ときどき性格が変わるんだ。それが重要でないことのはずがない。だって、前回の胡桃はその『もうひとりのほう』だった」

「……」

「でもさ、小さな頃とはいえ、胡桃のことだ。ささいなことでもない。こんな重要なこと、覚えていないはずがない。どうしちまったんだ。俺の頭は」

「それは、五可の記憶の一部に神様が鍵をかけているからにゃ」

「鍵をかけている?」

「記録はされてあるけれど、それを覗きにいけなくなっているというのか、そこに行く通路に鍵がかけられているようなものにゃ。簡単に言うと、覚えているけど思い出せなくなっているにゃ」

「神様ってのはそんなこともできるのか。でたらめだな」

「神様だもん。何でもできるにゃ」

「でも、それじゃあ、夢の内容も本当に起こったことかは、怪しいな。そもそも、記憶なんて曖昧なものだしな」

「いや、夢は『実際に過去に起きた』出来事にゃ。ちゃんと不完全な部分は補修されている。ただし、意図的に隠されている部分はあるにゃ」

 心当たりはある。

 ***ちゃん――か。

「しかし、神様も意味不明だよな。助けてくれたり、邪魔したり。タイムリープなんてチートをくれるんなら、ちゃんと記憶も残しておいてほしいぞ」

「それはそうにゃ。だって、そうしなければ、すぐに終わってしまうにゃん」

「え?」

「前は適当に誤魔化したような気がするが、別に隠してるわけじゃないにゃ。にゃんにゃん。五可は少し勘違いしてる。神様は悲運な五可に手を差し伸べているわけじゃない。五可が苦しむのも――そもそも胡桃が死んでしまうのだって、全部ひっくるめて神様の仕組んだゲームのうちで、余興なのさ――にゃん」

 

/つづく

 

 

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連載『未観測Heroines #17』 小説/長編

 

 

♯17

 

 ――夢。
 ――これは、夢?

 いや、もういい加減、気が付いている。

 これは、ただの夢なんかじゃない。

 夢の中にいながら、自分が何者で今がいつなのか、ちゃんとわかっている。

 体が勝手に動き、口が勝手に言葉を発する。自由にならない体の中にいながら、意識だけが独立して動いている。

 行動も。

 言葉も。

 そこに、自分の意志はない。

 だって、過去は変えられないから。

 きっと、これは、記憶の再生だ。

 絵の具をかき混ぜたように、視界がぐるぐると回りだす。しかし色は混ざらず、やがて、一つの風景画を描いた。

 幕が上がった。

 僕――いや、俺の物語の一幕。

 さあ、始まる。 

 鑑賞しよう。

 そこは、古びた神社だった。


 ◇


 境内に人はいなかった。神社と言っても、土地も建物も荒れ放題だ。最近、つまり現在の俺もこの場所に来た気がするのだが、とりあえず今は置いておこう。

 隣には小さな頃の胡桃らしき人物がいた。歳は違ってもひと目でわかる。基本的に顔の構造は変わらないから。

 俺達は二人ともランドセルを背負っていた。つまりこれは、小学生の頃の出来事だ。

 閑散とした境内を吹く風は、冷たかった。 

 あのとき――胡桃とふたりで、山で遭難したしたときと同じだ。それに雨も降っていた。

 小学生の俺たちの目的地は境内の奥にある古びた拝殿だった。建物の裏側にまわり、軒下を除くと、子猫が顔を出した。

 


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 ◇

 

 その子猫との出会いは、学校の帰り道だった。その日、俺は、気まぐれでいつもと違う道を通っていた。もしかしたら、近道でも発見できるかもとか考えていたかもしれない。

 その途中でこの神社を見つけた。興味を持ってうろうろしているうちに、その子猫と遭遇する。

 見つめ合うこと数秒。子猫は逃げなかった。

 子猫は軒下に住んでいるようだった。捨て猫なのかなんなのかはわからない。俺はたまに、その神社に通うようになった。

 学校の給食のあまりものを持ってきて、食べさせたりした。

 もっとも、お腹をすかせていた様子はなく、もともと食い扶持はあったのだろう。子猫といえど足元は軽快で、フットワークは軽そうだった。 

 俺たちはすぐに仲良しになった。

 子猫はしゃべれないから、考えていることを直接聞くことはできないけれど、ちゃんと気持ちは通じ合っているような気がしていた。

「僕達は友達だよ」

 子供の俺は言った。

 子猫は応えるように細い声で鳴いた。


 ◇


「うちで飼えるといいんだけどなあ……」

 父さんや母さんにはそれとなく、探りを入れてみたりしたけれど、家で動物を飼うこと自体、無理っぽかった。

 家で飼えると確信するまで、あまり大人には言わないほうがいい気がしていた。親にも、学校の先生にもだ。神社に行くことを禁止されるかもしれないし、もしかしたら、子猫がどこかに連れて行かれるかもしれないと考えていた。

「やっぱり無理そう?」

「うん」

「うちもね、飼えるといいんだけど……」

 ピンク色のランドセルが揺れた。

 いつの間にか、胡桃も、たまに顔をだすようになっていた。

 彼女と一緒に下校することはあまりなかった。小学校に入ってしばらくすると、男子は男子同士、女子は女子同士で遊ぶことが多くなっていた。

「えへへー」

「嬉しそうだな。そんなにこいつが可愛いか?」

「うん、そうだねー。それに、五可ちゃんと一緒だしね」

「学校に行くときは一緒だよ」

「朝は……ふたりきりじゃないしね」

 子猫の頭を撫でる胡桃。彼女も、すっかり、仲良しだ。でも、彼女の家でも買うことが難しそうだということは、うすうす感じていた。

 これからもっと寒くなる、屋根はあるけれど、こんなところで、冬の厳しさを超えることができるだろうか。


 ◇

 

「まったく、君も酔狂だね」

 少し遅れてきた幼なじみは、後ろから覗き込みながら言った。

「何が?」

「好き好んでこんな獣の世話をしたがることだよ」

 喋り方が、独特だった。皮肉めいているのに妙に平坦なトーン。

「今日は君のほうか」

 すぐに誰だかわかる。口調が変わっても顔が変わるわけではないから。

「ああ、僕だ。不服か? 別に、交代制ってわけじゃないんだけどね」

 髪には、星型の髪飾り。

 あれ? これって、このときまだあるんだっけ?

「人のこと物好きっていうわりにほ、自分だって、給食の牛乳、持ってきてるじゃんか」

「こ、これは。うちのクラスで余ってて――それで、たまたま思い出したんだ、五可が神社に残飯処理機を隠してるってことにね。たまたまだぞ。これからは資源を大事にしないといけないサスティナブルな時代だからな」

 小学生が難しい言葉を使う。サスティナブルって、こんなに前から言ってたっけ?

 彼女が皿に牛乳を出してやると、子猫はペロペロとなめ始めた。

「うまいか?」

 応えるように、ニャーとなく。

「顔がニヤけてるぞ」

「だ、誰が畜生など見てにニヤけるものか。でも、まあ、基本、動物なんかに興味はないが、一緒にいれば情もわく。可愛らしさを感じないことも、ない――ぞ」

 言葉では何だかんだ言いながら、彼女のほうも子猫のことは気に入ってるようだった。

 いつか言っていたコインの表と裏。

 性格は真反対でも、根っこはつながっているのだろう。

「君のほうになら、はっきり聞けそうだ。***ちゃんのうちで、この子を飼えないかな」

「……五可も知ってるだろう。うちで、今、とてもそんな話はできないよ――っておい僕にならって、僕のことをいったいなんだと思ってるんだ。僕だって、両親の仲が最悪なのは、それなりに心苦しいんだぞ」

 と、彼女は、無表情で言った。

 もうすぐ、冬が来る。


 ◇

 

 二学期が終わる日。

 明日から、冬休みだった。

 雪が降っていた。

 家から古い毛布を持ってきて、例の軒下に入れてはいるが、そろそろ寒さも限界だろう。

 俺は、この日、子猫を家に連れて帰ろうと思っていた。事前に話を通すより、もう、いきなり連れて帰って押し切ったほうが、確率は上がるような気がしていた。

 しかし、終業式のあと、神社に子猫の姿はなかった。待ってみたけれど、その日は結局会えなかった。

 そして、その日以降、その子猫には会えなかった。探しては見たけれど、子供の足には限界があった。

 気落ちする俺に胡桃は言った。

「しょうがないよ。猫って自分が死ぬ姿を人に見せないって言うしね」

 酷い言い方だと思った。もうひとりの胡桃のほうかとも思ったが、違う。髪飾りもしていない。胡桃は、続けて言った。

「大丈夫だよ。五可ちゃんには私がいるから」

 

 

/つづく

 

 

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連載『未観測Heroines #16』 小説/長編

 

 

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 #16

 

 胡桃の(くりくりとした可愛らしい)瞳が、猫耳の少女――タマを捉えている。

 気がするのだが、どうだろう。だって、タマの説明では、俺以外の人間には彼女の姿は見えないということだったから……。

 もしかしたら、偶然タマの後方の何かを見ているだけかもしれない。もっとも『その子』などと呼ばれるようなものの心当たりなど、全くないけれど。

「『その子』って誰だよ」

「それは私が聞いてるんだよ?」

 タマがさりげに横にずれる。俺と同じ思考をしての行動だろう。しかし、胡桃の(くりくりとした可愛らしい)瞳は、やはりタマを追いかけていた――さっきから、丸括弧で特別に今重要でない描写がある気がするが、まあ、あまり気にしないようにしておこう。いや、どれだけ胡桃のことが好きなんだよ、俺。

「いやいや、その、猫耳? 頭に可愛い飾りを付けた女の子だよ。この子、どこの子?」

「気のせいだよ。うん、眠たいんだよ、胡桃は。きっと夢を見ているんだよ」

 俺はしらばっくれることにした。ほとんど無理筋にはちがいないけれど。いや、或いは胡桃なら――

「うーん、確かに、たまに眠くて夢か現実か区別できなくなるからな私。そうだよね、これは、きっと夢だ――ってそこまで馬鹿な子じゃないよ、私っ!」

 駄目だったか。

「ああ、こいつは――」

 親戚の子とか言ってもすぐばれるだろうな。

「シャー!」

 俺が言い淀んでいるすきに、タマは胡桃を威嚇した。

「シャー! シャー!」 

「あなた、だあれ?」

 声のトーンに、少し棘のようなものを感じた――それは、わすわかな違和感程度のものだけれど。

「私は……五可の友達にゃ」

「ふーん。私は五可の幼馴染だよ。小さい頃からずっと一緒で、ずっと仲良しなんだよ」

「……」

「その耳、コスプレってやつ? 可愛い――」

 タマに近付き、耳を触ろうとする胡桃。

「フシャー!」

 手が触れる直前、跳ねるように身を交わしたタマは、脱兎のごとく(猫だけど)、部屋を飛び出していってしまった。

「行っちゃったね。で、結局あの子は何なの?」

「あまり気にしないでくれ、としか言いようがないかな。まあ、悪いやつじゃないよ」

「良い人か悪い人か。そんなことを私が気にしてると思ってるのかな? 五可は」

「?」

「……まあ、五可がそういうなら、それ以上詮索しないけどね」

 珍しく。少し不機嫌な様子の胡桃。

「胡桃、話って何?」

 話題を変えたくて言ってみたが、我ながら白々しかった。俺はその要件を知っている。もうなんか、胡桃の気持ちを知っておいてなお告白待ちみたいなのもどうなのか、とか考えてみる。

「うーん。もう、そういう気分じゃなくなっちゃったな。そだね、これは、仕切り直しかな」

 ため息をつく。

「そっか。じゃあ俺から。胡桃さ、明日暇か?」

「ん?」

「明日、遊びに行こうぜ」

「いいけど、どこ行くの?」

「それは……まだ決めていないんだ」

「ふーん。それって私と一緒にいたいってことかな」

 ぱっと、表情が明るくなる。

「明日さ、お前、運勢悪いんだよ」

「運勢って前の日からわかるものなの? 朝のワイドショーとかで発表されるものじゃないの?」

「ネットで一週間分まとまて見たんだよ」

「五可、占いとか見るんだ」

「ああ、最近はまってるんだ」

「ふーん」

「ちなみに、ラッキーパーソンは幼馴染だ。良かったな胡桃、俺がいる」

「あはは。ほんと、ラッキーだね、私」

「でさ、運気の悪い明日が終わって、明後日が来たら、胡桃に大事な話があるんだ」

「?」

 今度は俺から気持ちを伝えよう。

 とか、そんなことを、思ってみたり。

 明日――勤労感謝の日を超えることができたら――。

 

 

 胡桃が帰ったあと、またどこからともなく、タマが部屋に現れた。

「話と違うじゃんか。俺以外にお前の姿は見えないんじゃなかったのか」

「うーん。おかしいにゃ。五可のパパママには確かに見えてなかったが、どういうわけか、胡桃には、私の姿が見えるようにゃ」

「大丈夫かよ。俺にはお前だけが頼りなんだぞ」

 そうだ。俺は胡桃を救わなければならない。明日こそ、必ず。

「でもさ、タマ、お前、胡桃のこと、あんなに警戒することもないのに」

「五可のことは応援してるが――」

 いつもおちゃらけているタマは、このときばかりはいつになく真剣な表情だった。

「――あの女のことは嫌いにゃ」

 

 

 /つづく

 

 

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連載『未観測Heroines #15』 小説/長編

 

 #15

 

「つまり、俺がお前に首を喰いちぎられて過去に戻るたびに、胡桃の性格が入れ替わるということだな」

 と言うと、俺のベッドの上を我が物顔で占拠する猫耳女は、不服そうな顔を浮かべた。

 あれから。

 11月22日の朝にタイムリープした俺は、いつものように胡桃と登校した。胡桃は俺のよく俺の知る、小さな頃から一緒に過ごしてきた胡桃だった。

 失って、もう戻らないと思っていた日常。

 でも、そこにもう純粋な喜びはない。このあとの彼女の運命を知っているし、3度目の11月22日にどこか、作りもののような空虚さを感じていた。

 学校で都合3度目の授業受け、そして帰宅。夕食を終え、自分の部屋に戻るとだんだんと部屋に馴染みつつあるタマの姿があった。

「そういうと私が凶悪みたいにゃ。自分で死ぬのも酷だろうから、私が殺してあげてるだけにゃ。それに、なるべく痛くないようにしているつもりにゃ」

「痛かったよ」

「なるべく――にゃ」

 確かに、一瞬激痛はするものの、そのあとはすっと眠くなって、気がついたら、このベッドで目覚めている――11月22日の朝に、目覚めている。

「で、話を戻すが、過去に戻るたびに胡桃の性格が入れ替わっていくということでいいんだな」

「言えないにゃ」 

「うっせえ、猫! 哺乳類のくせに!」

「五可も立派な哺乳類にゃ!」

「そりゃそうだ」

「前にも言ったが、これは五可が真相を突きとめるゲームだから、私から確信に触れることは言えないようになってるにゃ」

「言ったら?」

「大変なことになるにゃ」

 不敵に笑うタマ。

「大変なことって?」

「まあ、無事ではすまないにゃ。五体満足でいられると思うにゃ」

「……わかった。じゃあ絶対言うな。ていうか、そのルールって誰が決めてるんだ?」

「神様にゃ。私は神様との契約によってここにいるし、このゲームを設計したのは神様にゃ」

「ふーん。まあ正直、人の生き死にが関わることでゲームっていう言い方もどうかと思うけど、まあ胡桃を救うチャンスをくれたのはありがたいな」

「……」

「何だよその間は」

「いや、五可は知らなくていいことにゃ」

 そう言ってバリバリとせんべいを頬張るタマ。俺と両親が居間で夕食を取っているときに、キッチンからくすねてきたのだろうか。確か、俺以外にはタマの姿は見えないと言っていたっけ。

「時間が戻れば食べたおせんべいも復活するから便利なものにゃバリバリ――」

「だから、人のベッドの上で食ってんじゃねえ! 食べカスが飛んでんだよ!」

「大丈夫にゃ。また、過去に戻れば綺麗になるにゃ」

「今日! ここで寝るんだよ!」

 さて、タマが使えない猫だと分かったところで、俺はこれからの行動を考えなければならない。

「ほっといたら、また胡桃は死んでしまうんだよな。それも言えないのか?」

「いや、それは、このゲームの前提にゃ。どうせ数回繰り返せばわかることにゃ。無駄は省くにゃ」

「それは助かる。無駄は嫌いだからな」

「便宜的に、今の胡桃――にこにこのほうを胡桃Aとしよう。胡桃Aは明日11月23日水曜日、午後5時30分に死亡する。そして、前回のツンツンの胡桃を胡桃Bとする。胡桃Bは11月26日土曜日、午前11時45分に死亡する。これは、このゲームの前提にゃ」

「とにかく、俺は胡桃の死を阻止すればいいんだな。死に方って決まっているのか?」

「決まってないにゃ。毎回同じとは限らないにゃ。ただ、パターンは限られてくるにゃ」

「何から守ればいいのかもわからないということか」

「そうだにゃ。あと補足説明にゃ。五可が胡桃の死を阻止できなかった場合の話にゃ」

「ああ」

 今から失敗したときのことを考えるのはどうかと思うが、大事なことだ。

「何度でも過去に戻れるにゃ。戻る先は4日前の朝にゃ」

「胡桃が死ぬ予定の日時の前に、俺が死んで過去に戻ることはできるのか」

「できるにゃ。ただし、一度過去に戻るとそこから私の充電に丸一日かかるにゃ」

「ふーん。まあ、何にせよ、とりあえずやるべきことは、明日、胡桃をデートに誘うことだな」

 それ自体は、胡桃Bよりは簡単なはずだ。そもそも最初の事故は胡桃とのデート中だったわけだから。

 あれ? 何か忘れてる気がする。

「じゃあさっそく胡桃に連絡だ。あれ? スマホが見当たらないな」

「鞄の中にゃ。さっきバイブレーションしていたぞ」

 学校から帰ってきてから鞄に入れっぱなしだったか。

「あ」

 画面を開くと、胡桃からの着信履歴が表示された。

 そうだ、思い出した。

 今日は胡桃に近所の公園に呼び出されて、そのまま告白されてしまう日だった。俺の人生の中でも一大事件だったはずだが、その後に起こったことが激動すぎて、こう言っては何だが、印象が薄れてしまった感がある。告白されて――付き合うことになって、そして、そのまま、明日のデートの約束をするという流れだったが、まだ間に合うはずだ。画面をタップして折り返す。

「はい、私だよ」

 胡桃の声。

 その声はクリアで、そして近くで聞こえた気がした。

 



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 振り返るとなぜか部屋のドアが開いていて、スマホを手にした胡桃が立っていた。

 無表情だった。

 胡桃Bみたいに。

「おばさんが、あがっていいって言ったから……五可電話出なくて、私もどうしても話したいことがあったし――それで、五可……その子、誰かな?」

 

 

/つづく

 

 

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【小説の書き方】時短! 忙しい人のための文章の書き方

 

 こんにちは。

 そこはかげです。


 この【小説の書き方】シリーズも通算5回目となります。

 過去分はこちらから→

 

sokohakage.hatenablog.com

 

 

 僕は素人ながらかれこれ、3年近く、当ブログで小説を書き続けています。

 この『小説の書き方』シリーズは、これまでに掴んだコツのようなものを書き残しておきたいというのと同時に、これから小説を書いてみたいという初心者の方にとっては、もしかしたら参考になるかもしれないという思いから、書いています。

 

 さて、面倒くさがりの僕が、『小説』を書くなんてとてつもなく面倒くさいことを数年にわたり続けてこれたのは、普段の生活の中に無理なく、作業を溶かし込んでいるからでしょう。

 小説家ではない僕達は、それほどたくさんの時間を執筆につぎ込むことができません。

 日常の中で無理なく活動を続けるためには『効率』が必要です。では、今回書いておこうと思う『効率』とは何かと言うと、

 

『執筆するために、まとまった時間を取らない』

 

 ということです。

 では、ここで、効率とは何かを定義しておきましょう。それは、かけた時間に対してどれだけ作業が進んだか、です。

 例えば毎日2時間、週7日かけて、14,000字書いたとします。この例では、1時間あたり1,000字書いた計算です。

  次に、毎日1時間ずつ執筆し、1週間で10,000字進んだとします。1週間という期間で見たときには進みは遅いですが、1時間あたりでいうと約1,400字の計算なので、先程の例よりも効率がいいと言えます。

 

 では、『まとまった時間を取らない』というのは言い替えると、『1回の作業時間を短くする』ということなのですが、それにどんなメリットがあるでしょうか。

 

○時間を空ける

 

 例えばこういうことはないでしょうか。パソコンの前でさあ書くぞと気合を入れたはいいが、行き詰まって、一向に筆が進まない。書いた文章が何だか気に入らなくて筆を止めてうんうんと悩む。

 僕はこういうことはしないようにしています。

 僕は行き詰まったら、書くのをやめます。そして、いったん、その書いた文章のことは忘れてしまうほど時間を空けます。だらだらと時間をかけるのをやめるというほかに、いったん、頭の中をリセットすることで、自分の書いた文章を客観的に読めるようになります。そうすると、

 

・文章の違和感に気づきやすい

・誤字脱字に気づきやすい

・新しいアイデアが浮かぶ

・新しい表現を思いつく

 

 など、様々なメリットがあり、結果求める文章に素早く辿り着けます。うんうん考え続けるよりも、こちらのほう断然が効率がいいと思います。

 

スマホ入力


 このときに大事なことは、スマホで入力するということです。

 使いやすいメモ帳アプリを探して、それに書いていくとよいです。もちろんフリック入力は使います。

 

○いつ作業するか

 

『比較的短時間の作業+モバイル機器での入力』でどうなるかというと、ちょっとした隙間時間で作業を行えるようになります。

 例えば通勤時とか。

 学校や仕事の休み時間とか。

 お店での待ち時間とか。

 ベッドでゴロゴロしているときとか。

 こういう時間を使ってほんの10分、15分ずつでも作業を進めていけば、生活の中で無理なく文章を書くことができます。

 

 そんなちまちましたやり方で、小説が完成することができるのかと思われるかもしれませんが、できます。

 少しずつでも確実に小説を完成させる方法は、こちら。

 

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 以上、効率的な文章の作成方法でした。ありがとうございました。

 

 ※小説(とイラスト)はこちら。

 

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連載『未観測Heroines #14』 小説/長編

 

 #14

 

 


 11月26日、土曜日。

 午前11時45分。

 綾ノ胡桃、列車との接触事故により、死亡。


 ◇

 
 俺は逃げるように駅を後にした。

 いや、言葉そのまま、逃げた。

 現実から。

 悪夢から。

 どうやったら逃られるかもわからず、滅茶苦茶に走る。でたらめな呼吸。涙と鼻水で溺れそうになる。

 気が付けば、古びた神社にたどり着いていた。どこをどう行ったのか。石の鳥居を通り抜けたような気はする。

 ここは、見覚えがあった。

 そう、確か、小さな頃に――

 境内は誰かに管理されているという雰囲気ではなかった。草が伸びっぱなしだし、少し行くと現れる小さな木造の拝殿もボロボロだった。

 拝殿の前、そこに、猫耳の天使――タマの姿があった。まるで、打ちひしがれた俺がここに辿り着くのを待っていたかのように。

 俺は、風にはためくタマの純白の衣装に、泣きながら縋り付いた。

「あー!」

「落ち着くにゃ」

「あー! あー! あー!」

「ヒト語を話すにゃ、人間」

「……胡桃が! また、胡桃が、死んでしまった!」

「うん、だからそうなると、忠告したにゃ」

「11月23日を越えたから、助かったんじゃないのか!?」

「誰もそんなこと、言ってないにゃ」

「話が違う」

「だから言ってないにゃ」

「あー! あー! あー!」

「人間を捨てるな!」

「そんなこと言ったって、どうすればいいっていうんだ。軌跡を無駄にした。また胡桃を死なせてしまった。目の前で!」

 バチンと。

 頬が弾けた――タマに平手でひっぱたかられた。

「泣くな、五可……」

「……タマ?」

「泣くなよ……」

 なぜか、タマのほうが泣きそうな顔で。    

 今度は両の手で俺の頬を包み込むように挟む。

「いいか、五可。よく聞け。確かに君は失敗した。ゲームオーバーにゃ。でも、このゲームはコンテニューできるにゃ」

「また、やり直せるのか?」

「何度でもやり直せるにゃ。私が何度でも過去へ連れて行ってあげるにゃ」

「でも、どうせ……胡桃はまた死んでしまう」

 もう、胡桃が死ぬのを見たくない。

「そのとおりにゃ。何もしなければ綾ノ胡桃は死ぬことになる。何度でも繰り返す」

「そんな……」

 そんなの、拷問だ。

「いいか、五可。逆を言えば、君が見た2つの死は必然だということにゃ。そこにはロジックがあるし、ルールがある。それを解読することで、君は綾ノ胡桃を救うことができる――これはそういうゲームにゃ。そして、このゲームに、回数制限はない。つまり、五可が諦めない限り、必勝にゃ」

 絶望するには早いということか。ゲームだか何だかいうのは、正直まだよくわかっていないが、俺にはチャンスがあるらしい。

 なら、やるしかない。

 やらない選択肢は――ない。

「タマ、俺を助けてくれ。今すぐ俺を――殺してくれ」

 前回と同じなら、時間を遡行するには、一度死ぬ必要があるはずだ。

「ここでいいのか? 屋外でだなんて大胆にゃ」

 なぜか、品を作るタマ。尻尾がゆらゆらと揺れている。

「ああ、ここでいい。どうせ人に見られたって、それもリセットされるんだろう?」

「まあにゃ。では、遠慮なく行くぞ」

 タマはつま先に立ちになり、俺の首に手を回す。そして、生ぬるい吐息が首にかかったと思った瞬間、激痛が走った。鋭い牙が、皮膚を突き破り首元に侵入し、肉を引き千切る。

「五可……」

 千切れた血管から血が吹き出し、意識が遠くなる。

「五可……幸せになれ」

 

 

 


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□11月22日(火) 


「――ハァ、ア」

 そして、俺は悪夢から目覚めた。

 真っ先に時計を確認する。

 11月22日、火曜日。午前7時。

 もちろん、悪夢というのはものの例えで、あれが夢だったなんて、今更思わない。

 また戻ってきた。

 胡桃が死んだ後の世界から、胡桃がまだ生きている時間へ。

 気が付けば、俺は胡桃の家へ向かっていた。また、殴られてもいい。胡桃の無事を確認せずにはいられなかった。

 綾ノ家。

 当たり前のように玄関を通過し、正面にある階段から2階へ。階段を登ってすぐの右側にある部屋。ドアを開けるとそこには。ベッドですやすやと寝息を立てる胡桃の姿があった。

 俺は性懲りもなく、ずかずかと部屋に踏み入り、寝ている胡桃を抱きしめた。向こうからすれば、まったく状況がわからないだろうが、それでも、そうせずにはいられないほど、どうやら俺は感情的な人間だったらしい。

 さすがに胡桃は目を覚ます。

 寝起きが良かろうと悪かろうと、そこは関係なく、これで目を覚まさなかったら、女として、以前に生物として危機感がなさすぎる。

 また、殴られるかと思い俺は体を強張らせたが、

「い、五可? だよね。どうして私にくっついてるのかな?」

 と、目を覚ました胡桃はしおらしく言った。そして、あまつさえ、俺の背中に手を回してきたりしている。

「胡桃?」

「これは、新しい起こし方なのかな。うん、確かに、ばっちり目は覚めるけど……さすがに恥ずかしいよ、五可……」

 

 

 /つづく

 

 

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