がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『異常で非情な彼らの青春 #10』 /青春

#10 体育館裏での殺人未遂から雑木林での一悶着――藤守林檎いわくロマンティックだったあの一件から1週間後、深夜と林檎の日常にさほど変化はなかった。 昼休みには、並んで弁当を食べ、その後は昼休みが終わるまで一緒に過ごした。林檎は大抵は本を読み、深…

『異常で非情な彼らの青春 #9』 /青春

#9 乱雑に生えた木々の中、藤守林檎は幽霊のように立ち尽くしていた。 虚ろに――森に溶け込んでいた。 足元には、ばらばらになった人形。初めて彼女と会話をした日、この場所での一幕を思い出す。 人形を人間に見立てた疑似殺人。 あの狂気を目撃したことが始…

『異常で非情な彼らの青春 #8』 /青春

#8 昼休みになると、深夜は弁当箱を持って体育館裏に向かった。目的地に到着すると、藤守林檎はすでにンクリートの上に腰を下ろしていた。 「よう」 「や」 なくてもいいような短い挨拶を交わし、隣に座る。 昼休みをここで過ごすようになってから、一週間が…

『異常で非情な彼らの青春 #7』 /青春

#7 教室に戻ったあと――といっても、すぐに授業が始まったので、その次の休憩時間のことであるが、深夜は藤守林檎との関係について、田中陸夫をはじめクラスメイトたちから質問攻めにあった。もちろん、本当のことなど言えるはずがないので、曖昧に返答してや…