がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

01-1 /長編『異常で非情な彼らの青春』

『異常で非情な彼らの青春 #7』 /青春

#7 教室に戻ったあと――といっても、すぐに授業が始まったので、その次の休憩時間のことであるが、深夜は藤守林檎との関係について、田中陸夫をはじめクラスメイトたちから質問攻めにあった。もちろん、本当のことなど言えるはずがないので、曖昧に返答してや…

『異常で非情な彼らの青春 #6』 /青春

#6 チャイムの音が鳴る。 つまらない授業の終わり、そして楽しい昼休みの始まりだ。 「全然わからなかったの俺だけか? なあ烏丸」 隣の席から話しかけてきたのは田中陸夫だ。主語が抜けていたが、今の授業――今の数学の授業の話であることは想像が付いた。ま…

『異常で非情な彼らの青春 #5』 /青春

#5 翌日の朝。 今日は普通に歩いて間に合うように登校していた深夜は、昨日と同じ交差点で、昨日と同じ女子生徒――藤守林檎と顔を合わせる。 「あ」 声を漏らしたのは深夜のほうだ。しかし、向こうも同じく『あ』と聞こえてきそうな感じに、ぽかんと口が開い…

『異常で非情な彼らの青春 #4』 /青春

#4 午後6時になる前には帰宅することができた。 まだ、両親は帰ってきていない。共働きで、二人とも家に帰るのはもう少しだけ遅い時間帯だ(まさか両親ともに海外出張だとかで、高校生と中学生の兄妹が一軒家に二人暮らしなどという、ラブコメのお約束的な環…

『異常で非情な彼らの青春 #3』 /青春

#3 木々に囲まれたこの場所はとても静かだ。 町の気配は消え失せ、どことなく非日常を予感させる。 ここは人目につかず、どんな悪事も秘密裏に行えそうだ。もっとも、何にだってイレギュラーが紛れ込む可能性はある。この日この場に居合わせた烏丸深夜のよう…

『異常で非情な彼らの青春 #2』 /青春

#2 「それは多分、笑わないお姫さまのことだな」 深夜のクラスメイトである田中陸夫(たなかりくお)は言った。「特徴から言って間違いない」 「何だその、童話のタイトルみたいな名前の奴は」 昼休み。深夜は昼食を済ませたあと、中庭のベンチに座ってぼう…

全37話『異常で非情な彼らの青春 #1』 /青春

#1 よく晴れた月曜日の朝。 烏丸深夜(からすましんや)は、自らの不注意を嘆いた。 高校に向かう途中の交差点で衝突した女の子は、深夜と同じ学校の制服を着ていた。 少しばかり寝坊をし、遅刻をしないように、いつもより足早であったという事情はあった。 …