がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

『未観測Heroines #1』 小説/長編

♯1 雨が降っていた。 都合よく見付けた薄暗い洞穴の中から、森が濡れていくのを、ぼうと眺めていた。 サラサラとした優しい雨音。 土の匂い。 虫の気配。 つないだ手のぬくもり。 ここには、子供しかいない。 僕と、彼女しか。 もうすぐ12月になる。だけど、…

小説一覧〜がらくたのご紹介

このブログは、主に僕が趣味で書いた小説を残していくためのものです。 ・小説一覧 ※各話へは、小説タイトルのタブから

作者が自分で考察してみた〜『太陽と冬の少女』③

3回にわたりお届けしているこのコーナー。 本編が9話に対して、考察が3回目というのは、いよいよバランスがおかしくなってきたという感じですが――というか、なら本編をもっと書き込めよという話ですが、今度こそ最終回です。 とはいえ、すでに本編の解説はほ…

作者が自分で考察してみた〜『太陽と冬の少女』②

前回に引続き、自分で書いた小説を自分で考察してみようという、不思議なコーナーの第2回です。 sokohakage.hatenablog.com ○「フブキ」は実在するのか 旅に出た太陽君は、ついに雪の降る街まで辿り着きます。そして、フブキを探して街を彷徨いますが見つか…

作者が自分で考察してみた〜『太陽と冬の少女』①

こんにちは。 そこはかげです。 今日は前回最後まで書き上げた『太陽と冬の少女』を 「自分で」解説してみようと思います。 sokohakage.hatenablog.com 僕はこれまで、自分で書いたものについて、ここはこういう意味だよ的なことは、言わないようなスタンス…

『太陽と冬の少女 #9』(最終話) /小説/短編/ファンタジー

#9 頬を突つかれる感触で意識が覚醒した。 目を開け、焦点が合った先に、少女がいた。 「フブ……キ?」 ではなかった。左右横に結んだ髪が特徴的な女の子。歳は中学生か高校生か微妙なラインだ。僕は体を起こした。 僕、どうしたんだっけ。いつの間にか、公園…

『太陽と冬の少女 #8』 /小説/短編/ファンタジー

#8 「フブ……キ?」 慌てて立ち上がる。地面に沈み込みそうなくらい重かった体は嘘のように軽くなっていた。 「フブキ……なのか?」 思わずそんな間抜けなことを聞いてしまう。彼女に会うためにここまで頑張ってきたのに、いざ目の前に求めていたものが現れる…

『太陽と冬の少女 #7』 /小説/短編/ファンタジー

#7 自転車を漕いで北に進み、雪の降る地域まで行く。僕の計画は簡単に言えばそんなところだ。 もちろん、1泊2日くらいの小旅行とはいかない。日本縦断とまでは行かないが、それに近いイメージだ。 母は落ち着きなくリビングをうろうろした。うろたえるのも当…