がらくたディスプレイ

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作者が自分で考察してみた〜『太陽と冬の少女』①


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 こんにちは。

 そこはかげです。

 今日は前回最後まで書き上げた『太陽と冬の少女』を 「自分で」解説してみようと思います。

 

sokohakage.hatenablog.com

 

 僕はこれまで、自分で書いたものについて、ここはこういう意味だよ的なことは、言わないようなスタンスを取ってきました。しかし、今回の作品に関しては少し思うところがあって、このような記事を書こうと思い至りました。

 この作品は、普通にストーリーを追っていっただけでは出てこない、隠れた構造のようなものがあります。それは初めから意図してというより、結果的にそうなったような気もします。気軽に書き始めたというのもあって、割とその場の思い付きで要素を付け足していった部分もあったります。

 とはいえ、わざわざ説明しなくても、巨匠や人気の作家の作品であれば、ファンが勝手に考察し解釈してくれるのでしょうが、僕の場合はそうはいきません。

 『太陽と冬の少女』は、自己満足という意味では満足しているのですが、しかし解釈されてこそという気もするので、この作品については、逆に自分で詳細に考察をやってみようという、言ってみれば思いつきです。

 

 なお、これからする解説は作品の解釈のひとつでしかありません。(作者が言うならそれが正解なのでは? と不思議に思われるかもしれませんが、そうでもないです。そこら辺は最後ほうに書きたいと思います。)

 

○表層のストーリー

 さて、この話のストーリーはわりとシンプルです。

①引きこもりの男の子(主人公)がいる。

②冬の間だけ、不思議な女の子(ヒロイン)が部屋に遊びに来るようになる。

③実はヒロインは、冬の精霊みたいな存在で、「冬のパワー」が弱まっており、やがて主人公の前から姿を消す。

④主人公は、ヒロインを探して旅に出る(=引きこもりじゃなくなる)。成長した主人公は、女の子と再会する。

 

 ストーリーとしては、これで成立していると思います。では、これだけでは見えない構造とは何か。順に説明していきましょう。

 

○コンセプトは「童話+美少女」

 主人公の名前は「太陽」といい、ヒロインの女の子の名前は「フブキ」といいます。

 漫画などでは、キャラクターの性格や立ち位置を示すような名前が付けられることがよくあります。「フブキ」はそのままだし、「太陽」というのも、引きこもりという属性の対極にある名前で、皮肉になっていますし、話の最後のほうを見れば、彼は本来は行動的な人間だったことがわかります。

 ですが、彼らの名前にはもう少し意味があって、それは、この話自体がイソップ物語の『北風と太陽』がモチーフになっているということを示しています。ただし「北風」・「太陽」の役割を、そのまま「フブキ」・「太陽君」に持ってきているわけではありません。

 ということで、それを踏まえ、改めて物語を追っていきましょう。

 フブキという少女は、引きこもりの太陽君を、部屋から出すという目的を持って彼の前に現れました。これは、彼女が旅人のマントを剥ごうとした北風としての役割を与えられていたということです。つまり、このとき「太陽」といいながらも、主人公の彼は「旅人」の役割でした(後に本当に旅人になるのですが)。

 なので、彼は、女の子に、引きこもりよくないよ、と腕を引っ張られても、ますます、意固地になって、部屋で遊ぼうと主張します。

 そして、次に旅人のマントを剥ぐ「太陽」の出番です。

 この役割を担ったのも「フブキ」です。彼女は自分が彼の前から姿を消すことによって、彼を部屋から出すことに成功します(あくまでそれは役割の話で、彼女がそのように一計を案じたわけではありません)。

 そして、ここでもう一人。「太陽君」もここでようやく太陽の役割がまわってきます。

 先程も申し上げたとおり、本来の彼は行動的で、本当は外に出たいと心の奥底では思っていました。また、フブキに対する愛情、思いにより、彼は旅に出ることを決意します。そんな彼の内なる情熱=太陽が、彼を部屋から出したのです。

 というのが、終盤に向かうまでの流れです。

 

○「冬パワー」という謎ワード

 もともと、話を思いついた段階では、後半は全然違う展開を考えていました。

 フブキが、消えてしまうところまでは同じですが、その後、主人公が取った行動は、自転車で北上するなんて生易しいものではありませんでした。

 彼はフブキが消えたのは地球温暖化が原因と考え、ヨットで太平洋を横断して、温室効果ガスの抑制を訴える、という突飛な行動に出ます。

 ですが、この奇跡的なストーリーラインを、いざ、そのまま書こうとすると、なんと言うか、政治臭が出るのが気になりました。ストーリーとしては出したいけれど、僕自身このあたりの問題について、何か主張をする気はないからです。

 つまり、本編に出てくる「冬のパワーが弱まってる」というよくわからん言い回しはは、「地球温暖化」という、社会問題感のあるワードを誤魔化した結果だということです。

 ということで、より簡潔にこの話の中盤以降の展開を説明すると、地球温暖化によって暖かくなってきたので、冬の少女に会えなくなる。という話なんです。

 そして、「ヨットで海に出る」というのも「自転車でフブキを探しに行く」に変更。旅の先でフブキに再会するという話になりました。自転車っていうのもエコですしね。

 

 さて、思ったより文字数も増えてきたので、次回に続きます。

 

 次回予告としては、最終話に出てきたツインテールの女の子の話をします。唐突に出てきた彼女にはそれなりの意味がありますので、それを解説していきたいと思います。