がらくたディスプレイ

趣味の小説置き場。どこかで誰かが読んでくれると幸せです。

作者が自分で考察してみた〜『太陽と冬の少女』③

 

 3回にわたりお届けしているこのコーナー。

 本編が9話に対して、考察が3回目というのは、いよいよバランスがおかしくなってきたという感じですが――というか、なら本編をもっと書き込めよという話ですが、今度こそ最終回です。

 

 とはいえ、すでに本編の解説はほぼ終えていて、今回は、この物語の結末に関すること、そして、その結末のあとの話をしたいと思います。

 

○予定外の行動

 

 話の最後のほうで、少し予定外のことが起きました。

 公園でのフブキとの再会のシーンですが、実はフブキは小さくなったちびキャラみたいたいな姿で登場する予定でした。コロポックルみたいなイメージです。冬のパワーが弱まった結果だということが予想され、ストーリーにも沿った演出だと思います。

 しかし、なぜか彼女は元の姿で出てき

てしまいました。

 それは、おそらく、前回の考察での「フブキは主人公の妄想ではないのか」という文脈を入れることを僕が思い付いたからです(言い忘れたことですが、これは、途中で思い付いて、追加した要素なのです)。

 しかし「もしかしたらこれは夢ではないか」というシーンで、コロポックルの姿でフブキが登場してしまうと、その意味合いがぼやけてしまう。そんなことを、無意識下で考えて、彼女は元の姿で登場することになったのだと思います。

 そしてフブキは、意外な行動に出ます。

 別れのシーン。「フブキ」は太陽君に、キスをします。

 太陽君にとって、フブキは一貫して「友達」でしたし、作者としても、その位置付けでいくことは、最初から決めてました。

 これも別れの演出として、書いてるときに思いついて入れたのですが、コロポックルなら、このシーンは別の演出になっていたでしょう。

 そして、これはあとから――それこそ、最終話を投稿したあとに気付くことですが、このキスという行動は、エンディングの意味合いを変えてしまいました。


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○狂った予定調和

 

 一年後、太陽君はフブキと再会した街に引っ越し、新生活を始めます。そして引っ越したその日、荷物の整理が終わった頃に窓を叩く音が聞こえます。つまり、フブキが来たらしいことを示唆して、物語は終わります。

 演出として姿はみせないのですが、実際にフブキは太陽君の前に再び現れ、以前のように楽しく遊びながら、太陽君の元に居続ける――というのが、僕が、用意したハッピーエンドでした。

 フブキがコロポックルで現れたのならそれでよかったでしょう。

 しかし、彼女は元の姿で現れてしまい、しかも今度は男女であることを意識しだします。

 その先の物語を想像すると、僕にはあまり良い展開になるとは思えません。

 

○物語は異類婚姻譚

 

 フブキと恋人になった場合、どのような物語が考えられるでしょうか。人間同士であれば問題ありませんが、フブキは人間ではありません。

 物語の分類として「異類婚姻譚」というものがあります。人間と、人間でないものとが結婚する話ということですが、この手の話の結末はだいたい「別離」と、相場は決まっているそうです。

 設定からいって、フブキは存在として凄く不安定で、いつか消えてしまうかもしれないような存在です。消えてしまったとき、、友達なら寂しいけれど仕方がない、で済む。

 しかし、恋人になってしまうとそうもいきません。

 本来この話はハッピーエンドでした。しかし、フブキの予定外の行動により、悲しい未来に続くものになってしまったのかもしれません。

 

○終りに

 

 これで、『作者が考察してみた〜太陽と冬の少女編』終了となります。この話は特に書くことが多かったので、こういう企画をやってみました。今後、他の作品でもやるかもしれません。

 さて、このシリーズの初めにも少し触れましたが、作者と言えども、自分の作品を完璧に理解しているとは限りません。意図せぬところで「こういう解釈もできる」といった要素が生まれることもあります。

 この考察にしろ「プロット段階で考えていたこと」、「執筆途中で考えていたこと」、「執筆後に考えたこと」が混在しています。特に最後の、その後の展開については、最終話の掲載後に自分で加えた解釈だったりします。

 作者にすら正解はなく、なのでどんな解釈であれ、読んだ人が、「自分の中ではこう」というのがあれば、それはそれで間違いではないのだと思います。

 

 あまりうまくまとまりませんでしたが、これで終わります。ありがとうございました。